要 旨: |
アデノ随伴ウィルス(adeno-associated virus, AAV)ベクターは、安全性の高い遺伝子治療ベクターとして広く用いられており、嚢胞性線維症、血友病などの疾患に対してはベクターを人体へ投与する臨床研究が進んでいる。しかしながら、安全性に勝れていることは臨床研究で明らかにされたものの、十分な治療効果を得るまでには至っていない。一般にベクターとして最もよく用いられているAAV2型ベクターでは、遺伝子導入発現効率に限界がある。例えば、マウス肝への遺伝子導入においては、従来のAAV2型ベクターでは、ベクター投与量を十分に増加させても、最大で全肝細胞の10%程度しか遺伝子導入発現がおこらない。
我々はこの現象をRestricted liver transductionと呼んでおり、単にベクター投与量を増加させただけでは肝細胞へのより高い遺伝子導入発現効率は期待できないことを示唆している。
近年、ヒト、サルの様々な組織から100以上の新たなAAVの型が発見されており、他血清型AAVベクターとしての応用研究が進んでいる。我々はここ数年、AAV8型ベクターに注目し様々な検討をおこなってきた。その結果、
AAV8型ベクターでは毒性を呈することなくほぼすべての肝細胞での長期安定した遺伝子導入発現が可能であることが明らかとなった。また、AAV8型ベクターの末梢血管からの投与で、全身すべての骨格筋、全心筋細胞、効率の良い膵線細胞への遺伝子導入発現が可能であること、AAV8型ベクターは血管脳関門を通過し、脳組織での広範囲な神経細胞、神経膠細胞への遺伝子導入発現が可能であることも明らかとなった。これらは、AAV8型ベクターの曖昧な組織特異性を示すもので十分考慮すべき事項ではあるが、毒性を呈することなく、様々な組織において非常に高い遺伝子導入発現効率を示すことは、AAV8型ベクターの様々な疾患への遺伝子治療への応用や、新たなfunctional genomicsのツールとしての応用への可能性を示唆するものと考えられる。本発表では、AAVベクターの有用性、
生体内でのAAVベクター長期遺伝子発現の機序、挿入変異の問題点など、最新の我々の知見を紹介する。
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